1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

今後の活動予定はホームページをご覧ください

下鴨車窓のホームページはこちら

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- | - | -
すべてが学生だった
もう二週間が過ぎようとしているが、近畿大学の舞台芸術専攻の授業で10月はじめに授業発表として公演をしたのだった。初年度の今年は当然のことだが、近大の仕組みや学生の気質など触れるものすべてが初めてで、出演者もスタッフもそしてほとんどの観客も「学生」だった。
わたし自身大学生のときから演劇を始めたが、かといって当時の感覚を思い出してやればよいかというとそういうことではなく、それどころか状況が違い過ぎて昔のことは参考にすらならなかった。思い出したところで、教員として仕事としてそこにいるわたしには適用のしようがなかった。近大に限らず他大学の舞台芸術学科でも言えることだと思うが、わたし自身が大学生のときとの違いは「学業(専攻)そのものが演劇で演劇をやっている」ことと「学業(専攻)は別にあって演劇もやっている」ことだろう、という指摘は公演を観てくれた先輩からいただいたものだ。どちらが良いとか悪いとかを言うつもりはないが、わたしの初年度の授業はその違いへの認識が甘くて反省が多く、いわゆる市民劇の演出をする感覚でいたところがまずかった。そこが学校という閉じた場所のなかであること、そしてすべてが学生であること。このことに笑わされたり困らされたりいろいろだった。逆もそうだろう。学校慣れしていないわたしに学生たちは戸惑ったに違いない。好奇心の強い学生の積極さに助けられ普段できないような試みもできたので面白いところも多々あったが、全体としてはなんとかたどり着いた作品だった。かろうじてと言うべきか、来年度の依頼もいただいたので次はもっと作戦をたてて臨むつもりだ。

それにしても。教えることで学ぶというのももちろんあるのだが、今は素朴に学ぶ時間が欲しい。秋なのに。

以下は、その近大の授業公演で配られたパンフレットに記載した文章です。

<以下、パンフレットの文章>

 映画『DEAD POETS SOCIETY』(邦題は残念なことに違うもので「いまを生きる」)は全寮制の名門高校が舞台で、男子だけのいわゆる進学校なのだが、ある真夜中に生徒たちが寮をこっそり抜け出すシーンがある。彼らの行き先は森か何かのほら穴で、仲間の一人が呼び出した他校の女生徒も来たりする。ふだん学校で窮屈な思いをしている彼らは、その場所でタバコをふかしながら学校の授業では取り上げられない古典の詩を朗読し、歌を歌い、踊り、夜が明けるまで騒いでいるのだった。
 その場所が映画に出てくるのは一度きりだったが、そこは彼らが学校の指導に従順で名門大学をひたすら目指す「生徒」から解放される場所だ。彼らはそこでひと時の自由を謳歌する十代の「少年」になる。そして教室や寮の部屋で見るのとは違うお互いの表情を目の当たりにして彼らの仲間意識はまた一歩深まり、その後彼らはかつてあったという「死せる詩人の会」(DEAD POETS SOCIETY)の復活を目論む。ちなみにそれがまた悲しい結末を呼び寄せることにもなるのだけれど。
 たしかに「わたしが何者であるか」ということは、その時自分が誰の前に立っているのかによる。父母の前では息子や娘であり、教師の前では生徒、上司の前では部下であるように。ところがそれだけではない。自分がそのときどこにいて、目の前の相手とどんな体験を共有しているかによっても「わたしが何者であるか」は変化する。自宅のリビングで将来をどのように考えているのかと問いただす父の前にいるわたしと、病院の一室で静かに死にゆく父の傍らにいるわたしとでは、同じ「父と息子」でもその内実はまるで違う。同じ相手でもその場その場で自分とその相手は出会いを繰り返し、そのつど両者の関係は変容し続ける。「わたしが何者であるか」はその連続の一片に過ぎないのだろう。言い当てようとしてもそれはその時の自分でしかなく、次の瞬間にはまた別の「わたし」になっていく。
 再会も含めて人と人との出会いが生じるところで彼が何者であるのかを示す、それが演劇の原点だとわたしは信じているが、『いつわりとクロワッサン』を考えるうちにわたしの妄想は先のようなところまで膨らんだ。テキストがそこまでしろとは言っていない、観客が直接は見られない別の部屋をもう一つ作ろうと決めたときからのことだ。
素朴なコメディを作ろうと思っていたのだが、どうしても余計なことを考えてしまう。ご覧いただく皆さんがそれも含めて面白がっていただければ幸いだ。

演出:田辺剛

<以上、パンフレットの文章>

RSS"no size"が更新されるとお知らせします

スポンサーサイト
- | - | -
>じゅんさん
ありがとうございます。わたしのコメント発見が遅れてすでに時期が過ぎてしまいました。すみません。再会のタイミングを探りつつ、また連絡します。コメントありがとうございました。
田辺剛 | 2010/11/01 14:24
こんばんは。相変わらずの活躍みたいですね。
さて、私、11.18〜24まで、ミュージカル「ワンダフルタウン」で大阪(梅田芸術劇場)にいます。暇な時間が合ったりしたらぜひ呑みましょう!
舞台稽古のため16日入り、24日帰りです。
では!
じゅん | 2010/10/29 23:59
COMMENT









TRACKBACK URL
トラックバック機能は終了しました。
TRACKBACK