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劇作家、演出家の田辺剛による「表現」をめぐる思索の軌跡です
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劇団GIGA(以下、GIGA)の公演ではないけれど、山田恵理香さんの演出で2009年3月に京都でも上演された『なにもしない冬』は衝撃だった。かつてのアングラというと語弊があるかもしれない。関西にお住まいの方なら『闇光る』以前の「遊劇体」の舞台を連想したと言えば少しは通じるだろうか。それはMONOっぽい上演を期待した観客が途中で帰ってしまうほどで、わたしは始め呆然としてそれからはまったくの釘付け状態だった。確かに一般に言われるような土田戯曲の面白さに焦点は当てられていなかったが、戯曲が持つ本質は山田さんなりの仕方で射抜かれていると感じた。そう、山田さんはテキストの本質を嗅ぎ取るという演出家としての素質、その嗅覚を確かに持ちかつ独特な仕方で表現できる人なのだと、アトリエ劇研にどこかを呼ぶなら山田恵理香さんの作品だとそのときにわたしはもう決めていたのだった。
そして彼女が所属するGIGAは彼女の演出をもっとも純度が高く実現できるメンバーで構成されている。昨秋、福岡で観たサルトルの『蝿』はGIGAの本公演。歓楽街・中洲を背景にした野外劇で、劇の舞台となるアルゴスの町は人々の情念と欲望が渦巻くところだが、それがハードロック?の生演奏も加えた演出で見事に中洲の街に重ね合わされたのだった。さて、今回GIGAが上演する作品『漂着』は、今回の演劇祭に参加してもらうにあたってわたしが書き下ろした新作だ。わたしは山田さんとGIGAのメンバーによる上演に耐えうる、強いテキストを書こうとそのことに腐心した。彼らのエネルギーに打ち負かされることのないように。もはやこれは、わたしのテキストとGIGAとのまぎれもない戦いだと思っている。その勝負の行く末をぜひご覧いただきたい。
<以上、田辺の紹介文>
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