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ニュータウンを証言する
烏丸ストロークロックの「漂白の家 第2話『六川の兄妹』」を観た。
 烏丸ストロークロックは近年「六川」という架空のニュータウンを舞台にした作品に取り組んでいる。岡田ケンという人物をめぐって物語は展開しているのだけれどこの第2話で彼は不在だ(あらすじはこちら)。
 昨年の11月に烏丸ストロークロックが「漂白の家(メモ3)」という30分ほどの試演をしてその感想も書いたのだけど当時から取り組んでいた「町をつくる」という作業が今回も中心となっているようにわたしは思った。
 私見によると「ニュータウン」は高度成長期における資本(金)とコンクリート建築の技術(科学)が出会ったところで生まれた現象だ。農耕社会における村という原始がなく、つまり自然との共生という体験がなく始まった共同体の場所。自然との共生どころか、金と科学によって自然を征服すること(例えば企業の誘致や山の切り崩し)から始まった場所。だからその場所は、そこに住む人々の労働と消費が効率よくできるように配慮されている。延々と続く団地群。駅前のショッピングモール。
 六川では町の発端となった大きな企業が撤退したためにさびれていく。しかしそこには人々が住み続けるわけだから、共同体の場所はそのまま残るということになる。共同体ができて、農耕から工業へと産業が発達するのとは逆の進行だ。白骨化した死体の発見と団地に住む岡田ケンという人物の関連が探られる。
 この劇の最大の特徴は登場人物が岡田ケンについて証言するというカタチで進んで行くことだ。不在の岡田ケンのことを15年前にまでさかのぼって話すということ。曖昧な記憶だからつじつまのあわないこともあるかもしれない。そうした記憶をたぐりよせながら登場人物たちは証言を続ける。こうして岡田ケンについてさまざまな人が証言をしながら、けれども不在の人物のイメージは語られれば語られるほど、その六川という町の空虚さと重ね合わされるように感じられた。観客はその証言を聞く者とされる。証言を聞く観客はもはやその劇世界を傍観するのではなく、関わる者となる。その六川という町の不気味な、虚ろな空気をとても近くに感じたのは「証言」という手法をとったからだろう。劇を観る時に傍観者でありたいと思う観客は戸惑うかもしれないが、わたしは芝居は自分の想像をもって参加するように観たいと思うので、とても刺激された。
 最後には発見された死体の人物がいかにして殺されたかが明かされるが、それはすでに岡田ケン個人の殺人ではなく、団地のあるいは町全体が加担した殺人であるというイメージが提出される。虚ろな町。自然との共生を体験していない町は、だから人の死を扱う歴史を持っていなかった。共同体にとって最重要ともいえることのひとつに人の死とその弔いがある。人の死とその弔いをどのように取り扱うのかが、その共同体のアイデンティティに深く関わっている。六川というニュータウンは、岡田ケンの犯した殺人の共犯者となることで、あるいはもしかすると岡田ケンは町自身の象徴といえるかもしれないが、そのように生け贄の死をもって初めて共同体として成り立つ条件を手に入れたのかもしれない。そしてその死体は河川敷に埋められた。そこに死体が埋められていたとは知らずかつて歌手だった女性の住人は河川敷でいつも歌を歌っていたのだという。
 岡田ケンの住む団地には花壇があってそこでは季節が変わるごとに違う花が植えられるのだという。人工の町における自然を、団地の中のちっちゃな花壇という場所に見た気がした。
 どんなに金を持ち科学が発達したとしても、人間の自然性というのは変わることなくあってむしろ金と科学に自分自身が圧倒された状況ではその自然性がいびつなカタチで現れるのだということを思った。
 そういう意味で少し大げさに言うならば、この物語は六川という町を舞台にした神話だ。「神話」というと神様のお話ということにもなりそうだが必ずしも神様がいる必要はなくて、それは科学では語り得ない、あるいは科学以前に語られていたわたしたちの世界の話のことだ。
 ただ劇は新興宗教と思われる団体が登場するところで終わって、第三話(来年に上演予定だとか)に続くのだけれど、このように宗教あるいは信仰が問題になってくるところは共同体を語ろうとするのにとても説得力がある。人の死と弔い、そして宗教。一見どんなにそうは見えなくても、あらゆる共同体にある宗教。
 そうして烏丸ストロークロックの演劇(物語)による「町づくり」「共同体づくり」は進んで行くのだろう。次回作もとても楽しみだ。

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